憂いに満ちた忌むべき世界「憂世」から全く反対の明るい語感の「浮世」。江戸の出版界に一人の青年が現れ、浮世絵誕生のきっかけを与えました。その青年の名は、菱川師宣(?〜1694)。
浮世絵の歴史
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寛永時代(1624~1644年)には、狩野派に替わり、様々な町絵師たちが風俗画を手掛けるようになりました。これまでの風俗画や名所絵は、伝統的な場面描写から人々の日常や遊里をテーマにした「仕込み絵」に変わっていきました。
洛中洛外図屏風(舟木家本)では、遊女町や歌舞伎小屋など新しい都市の歓楽の場が重要なテーマとして描かれています。岩佐又兵衛の作風は、肉感的でふっくらとした頬、長い顎を特徴とし、樹木の描写や人物の視線を通じて人間の内面を深く描き出す視点が際立っています。
16世紀初めから17世紀中頃の150年間は、世の中に対する理解が、忌むべき憂世から肯定的に楽しむ浮世へと変わっていった時代です。このころの絵画は、近世初期風俗画と呼ばれます。
浮世絵は、江戸時代に発展した絵画で、現実が「憂世」とされる中で、一瞬の楽しみを描く「浮世」の考えを反映しています。絵師たちは当時の流行やテーマを敏感に取り入れ、遊女や役者を題材にした絵を新しいスタイルで描きました。