浮世絵、喜多川歌麿「墨堤筑波遠望圖」掛軸

一回勝負の厳しさが生み出した、
広重肉筆風景画の粋を完全復元!

(作品解説より 日本浮世絵博物館理事・主任学芸員 酒井雁高

 手前の墨堤(墨田堤)には桜木を配し、中景に真乳山、聖天、三谷堀が描かれている。その後ろに三囲神社、帆掛け舟、遠景には筑波がさらりと描写されている。
 広重は情の濃やかな人物であった。本図を見てもわかるように、穏やかな心象風景は、そのまま画家自身の性格を表している。墨堤に紅二点・美人を描くことを忘れてはいない。この二美人により、この絵は、桜の木とともに、よりいっそうの華やぎを添えているようだ。
 この絵に漂う、一種の風情、のどかで平和な江戸の名残りは、もはや求むべくもない。ただ遺された作品を通じてのみ、古き良き江戸の面影を偲ぶことができるのである。薄墨の中に品の良い色香を感じさせる画家―それは広重をおいて他にはいない。

墨堤筑波遠望圖 浮世絵拡大図

浮世絵掛軸:墨堤筑波遠望圖 歌川廣重筆(肉筆画)墨堤筑波遠望圖 歌川廣重筆(肉筆画)

浮世絵掛軸・収納箱入り

定価 130,000円(税込)

豪華複製・特装掛軸■体裁

上下表装布=錦支那
中廻し=貴船緞子
一文字布=新金襴
風帯=新金襴
本紙=特上絵絹
軸先=漆塗り唐木
印刷=多色オフセット印刷九色刷
収納箱=桐箱上製外箱付
掛軸寸法=天地177.0糎 左右45.5糎
本紙寸法=天地93.0糎 左右33.5糎
監修・解説=酒井雁高
(日本浮世絵博物館理事・主任学芸員)

初公開 
日本浮世絵博物館秘蔵の広重肉筆画

 広重といえば「東海道五十三次」(ほえいどうばん)は、余りに有名である。江戸の日本橋から始まり京都三条大橋で終る大判錦絵は、北斎の「富嶽三十六景」と並んで我が国を代表する風景版画の双璧といわれている。広重三十七歳の作品で、これによって名声を得た記念すべき作品となった。
 広重は、「京都名所絵」「近江八景」「木曽街道六十九次」(渓斎英泉と合作)「江戸近郊八景」等と相次いで連作を発表した。中でも晩年の「名所江戸百景」は、広重絵画の集大成ともいえるもので、自然鑑賞の秀逸さが如何な区発揮された優品である。後年ゴッホが油彩画で「亀戸梅屋敷」と「大橋あたけの夕立」を克明に題字まで模写しているのをみると浮世絵と西洋絵画の関わりを知る上ではなはだ興味深いものがある。
 最後に広重は、大判三昧揃いの三部作を我が国古来のテーマである「雪月花」によって描いている。これらの広重の風景画をみるとき、日本人が持っている詩情性を絵画に託することが出来た希有の画人であったといえる。
 この度の肉筆画は、広重特有の詩情性が横溢した優品で、広重が信州松本の酒井家に出入りしていたことを考え併せると一段と興味尽きない作品といえる。

日本浮世絵博物館の認定印この度の複製にあたり、財団法人 日本浮世絵博物館の認定を頂き、改めてここに認定印を捺印し、その出来栄えを保証するものである。