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広重魚尽の鰹と桜

戻り鰹の旬は?

みなさん、春の「初鰹」はよく知っていますよね。では、「戻り鰹の旬」はいつかご存知ですか?
9月初秋です。まさに今なんです。

「初鰹」は、九州南海域から高知沖で漁獲されるもので、3月〜5月に北上してきます。また「戻り鰹」とは北上を終えて南に戻っていく鰹のことで、一般的には脂の乗った鰹のことです。

初鰹はサッパリ系で、戻り鰹は脂がのったコッテリ系。しかし、魚にも大小の違いがありますので、一概にそうは決められません。また、人の好みもサッパリかコッテリか違うでしょう。

江戸時代には、九州南海域から高知沖で捕れたものではなく、東京に近いものが「初鰹」になりました。また、鰹は足が早い(腐りやすい)ので、酢などで食されたと言います。

「初物」と「旬」の違い

「旬」とは、魚、野菜、果物などが一番おいしい最盛期のことです。「旬のはしり」という言葉があります。「旬のはしり」でも、一番はじめに出荷されるものが「初物」です。

初物を食べると75日長生きする。鰹は「勝つ魚」として、武家に喜ばれたことなどから、初鰹は武家の男と江戸っ子(下の説明参照)に人気がありました。そんな初鰹を題材にした俳句や川柳もたくさんあります。

(代表的な俳句)
目に青葉 山ほととぎす 初鰹
(川柳)
聞いたかと問えば 食ったかと答える
目と耳は ただだが 口は銭がいり
奥様は聞き お妾は 早く食い
※武家の奥様より、お妾の方が早く初鰹を食べる。
女郎より まだも鰹と 女房いい
女房を 質に入れても 初鰹
川柳は、みんな初鰹に狂った男を読んでいます。

カツオ

あなたはこんな高い「初鰹」を食べますか?

でも、江戸っ子が「女房を質に入れても初鰹」といった初鰹って一尾、いったいいくらだったのでしょうか?
西山松之助著『大江戸の春』に、こんな「化政期一文人の生活資料」からの引用があります。

世間ばなし。当15日か初鰹14本小田原町へ上りそうろう。7本は供儀へお買上。これはいつも定値段百疋宛と申す事にそうろう。2本は八百善という料理茶屋1本4両(24万円)づつに買いそうろうよし。その翌日は1分2朱(22,500円)くらい、3、4日過ぎそうろうては7、8匁(7,000、8,000円)くらいにそうろう。

金1両(6万円)=4×分(1.5万円)=16×朱(約3,750円)=60×匁(1000円)
※1両の値段は、今の物価により変化します。円換算は、『大江戸の春』出版時の1996年。2018年では、もっと高くなります。1両=75,000円ほどか。

「武士は食わねど高楊枝」の武士と「江戸っ子」町人って、粋ではなく単なるバカなのでしょうか。一人で鰹を買えない町人は、グループで八百善などの料亭に行き食べたといいます。

それでも、あなたはこんな高い「初鰹」を食べますか?

ところで、「江戸っ子」って誰なの?

18隻後半、蔵前(札差)・魚河岸・新川(酒問屋)など、古くからの下町の江戸の町人であった人たちが文化生活をする金持ちとなり、多彩な江戸文化を創出するようになった。この町人を「江戸っ子」と言います。

この「江戸っ子」が初ガツオに大金を投じるようになりました。一瞬で消える、あの花火と同じように大金を投じたのです。