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月岡芳年『新形三十六怪撰』

『新形三十六怪撰(しんけいさんじゅうろっかいせん)』は、幕末から明治前期にかけて活動した浮世絵師・月岡芳年による妖怪画の連作です。

月岡芳年は生涯を通じて、妖怪を自身の作品の重要な主題として描き続けました。その中でも『新形三十六怪撰』は、芳年の妖怪画の集大成と評されています。

題名の「新形(しんけい)」は、「神経(しんけい)」に掛けたものとも、古来の伝承にある妖怪を新たな感覚で描いたことに由来するともいわれています。

『新形三十六怪撰』の5つの特徴

  1. 妖怪画の集大成
    月岡芳年が生涯をかけて描いた妖怪画の集大成であり、全36点の連作から成ります¹。
  2. 新しい感覚での描写
    古来の伝承にある妖怪を新たな感覚で描き、「新形(しんけい)」というタイトルは「神経(しんけい)」に掛けたものとも言われています。
  3. 人間の姿を中心に描写
    妖怪や怪異そのものよりも、それらを見る人間の姿を中心に描いた作品が多いです¹。
  4. 隠し絵の手法
    妖怪や怪異を隠し絵のように描写し、それらが人間の妄想であるかのように解釈する手法が特徴的です¹。
  5. 虫食い状の枠
    絵の枠が虫食い状になっており、これは芳年が神経症に苦しんでいたための幻覚を描写したものとされています。

月岡芳年『新形三十六怪撰』全36点を鑑賞!

画面の枠は虫食い状ですが、これは最初からデザインされたものです。

後年、月岡芳年が神経に異常をきたし、幻覚を描いたという説もあります。

妖怪画でありながら、主題の妖怪や怨霊よりも、それらを見る人間たちが中心に描かれることが多いです。

「仁田忠常洞中に奇異を見る図」や「業平」のように、妖怪を見る人間のみを描いた作品もあります。

また、「清玄の霊桜姫を慕ふの図」では怨霊を襖の染みのように描いたり、「清盛福原に数百の人頭を見るの図」では、襖の取っ手と月が重なり髑髏に見える工夫がされています。

このように、妖怪や怪異を隠し絵のように表現する技法が用いられています。

貞信公夜宮中にて怪を懼しむの図

さぎむすめ

武田勝千代月夜に老狸を撃の図

大森彦七道に怪異に逢ふ図

清玄の霊桜姫を慕ふの図

老婆鬼腕を持去る図

鬼若丸池中に鯉魚を窺ふ図

小町桜の精

為朝の武威痘鬼神を退く図

内裏に猪早太鵺を刺図

清姫日高川に蛇躰と成るの図

生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒の図

鍾馗夢中に捉鬼の図

地獄太夫悟道の図

藤原実方の執心雀となるの図

平惟茂戸隠山に悪鬼を退治す図

皿やしきお菊の霊の図

藤原秀郷龍宮城蜈蚣射るの図

布引滝悪源太義平霊討難波次郎の図

葛の葉きつね童子にわかるるの図

仁田忠常洞中に奇異を見る図

清盛福原に数百の人頭を見るの図

那須野原殺生石の図

業平の図

三井寺頼豪阿闍梨悪念鼠と変ずるの図

蘭丸蘇鉄之怪を見る図

ほたむとうろう

大物之浦ニ霊平知盛海上に出現の図

小早川隆景彦山の天狗問答の図

二十四孝狐火の図

宗祇の図

源頼光土蜘蛛を切る図

節婦の霊滝に掛る図

茂林寺の文福茶釜

四ツ谷怪談

おもゐつゝら

『新形三十六怪撰』まとめ

『新形三十六怪撰』は、月岡芳年が手掛けた全36点の妖怪画の連作で、彼の妖怪画の集大成とされています。

このシリーズでは、妖怪そのものよりも、妖怪を見る人間の恐怖や驚きを描く点が特徴です。

例えば、「清盛福原に数百の人頭を見るの図」では、襖の取っ手と月が重なり髑髏のように見える工夫が施され、「清玄の霊桜姫を慕ふの図」では、怨霊が襖の染みのように表現されています。

また、虫食い状の枠も妖怪画としての独特な演出で、芳年が神経症に悩んでいたとされる幻覚を反映しているとも言われています。

『新形三十六怪撰』は、古来の伝承に新たな感覚を加え、妖怪画の新たな境地を切り開いた作品群です。